冬至というにはとても暖かだった今日、花生け師の上野雄次さんが千駄ヶ谷の、ギャラリーでもライブハウスでもクラブでもない、BAR機能をはらんだ、アートやエンターテイメントのラボラトリー(実験室)というmeconopsis(メコノプシス)でパフォーマンスをなさるというので出かけました。現在は、土日の夜しか営業していないらしく、昼間はスタジオとして貸し出しているそうです。
上野さんは、アロエと名前のわからない多肉植物を、ひたすら太い針金で巻き付けていきます。それを、天井から吊して、真っ赤なバラを埋め込み、太いセロテープでぐるぐるまきにして、ナイフを巻き付けた赤いろうそくを上からつきさしました。その行為自体はサディスティックなところもあるのですが、花材の組み合わせも含めて出来た作品はエロティック。私は先に失礼したのですが、この後も破壊してさらに創るということを繰り返したみたいです。最後はいけにえだそうです。
こちらでゆず酒をいただき、家に帰りゆず湯に入り冬至を過ごしたのでした。


上野の森美術館で開かれている藤田嗣治の「レオナール・フジタ展」に行きました。この美術館は、以前のダリ展の時も井上雄彦展の時も外に行列が出来ていて諦めたのですが、今回は三度目の正直で入場できました。
今回は、幻の群像大作の公開がメインになっているようでした。
大きくは4つのパートに分かれての展示。
・「すばらしき乳白色」とパリで絶賛された初期の裸婦シリーズ。間近で見ると確かにごふんを塗った人形のような肌というか、焼き物の作り手の西川聡さんの白磁の器が最近入荷したのですがその肌合いととても似ているのです。人間に近いというよりもそういった人形や陶磁器に近い肌合いです。
・群像表現への挑戦として、今回の目玉の幻の大作4点を中心としたものです。その大きさや「構図と闘争」はエネルギッシュな勢いがあり圧倒されるものがあります。
・晩年を過ごしたエソンヌ県のアトリエでの作品や資料。手作りされた日常使う家具や食器や小物は、その生活がうかがわれて親しみを感じました。
・キリスト教の改宗と宗教画として、ランスの平和の聖母礼拝堂の内部のフレスコ画やステンドグラス。キリスト教とフジタは結びついていなかったのでここまで描き残していたのは意外な感じを持ちました。
フジタの作品には猫がしばしば登場しますが、今回私が印象に残ったのは墨と水彩で描かれた猫をテーマにした屏風でした。日本画家による猫の屏風はきっとあるのでしょうが、それとはまた別の伝統だけではない、フランスで生きたからこその現代を生きる屏風とでも言えるような作品でした。

浅草橋から馬喰町、東神田界隈の問屋街で古いビルや空き物件や空きスペースを展示会場とした街全体を巻き込んだイベントCET08(http://www.centraleasttokyo.com/08/)
が行われています。そのひとつ、
山口絵美×小川敦生【ドローイングとその残像】
at 大原第五ビル 2008年12月10日(水)〜14日(日)18:00〜22:00
に行きました。夜の馬喰町界隈はひっそりとしていますが、会場は馬喰横山の駅前なので迷うことなくたどりつきました。
小川敦生さんは、均一な線による緻密なパターンの集積で、作品を紡ぐドローイング作家(装飾ともグロテスクとも取れる過剰さは紙の上に留まらず、壁面、ガラス等々にも侵食している)で、以前、偶然に美容院での鏡に描かれた作品を拝見して興味を持っていました。そして、偶然が重なり、最近知り合った写真家の方ともコラボレーションをしていたのです。この作品がまたエロティックで、忘れかけていた彼への興味が復活したのです。
そして、今回は彼と映像作家 山口絵美さんとのコラボレーションです。山口さんは、光や音を採取し、世界の欠片で作品を編む映像作家で2008年9月ミラノでの小川敦生展のための映像制作を手掛けたご縁からのようです。
古いビルの5階の最上階まで必死で駆け上がると、「こんばんわ」と挨拶する人が。修行僧のようにやせているものの、もしかしたら「小川さん?」「はい」「やせましたね」「イベントが続くとやせるんですよ。今年の最初にお逢いしたなら15キロは落ちました」
「あの、作品は?」「この壁にうっすらと残っているのがそうなんです。描いて消してその残像なんです」とのことで、よく見るとうっすらと残っています。屋上にも、ドローイングを消して水で流した後と、書き損じがそのまま残っています。この過程を山口さんが映像として残して、来年(再来年かも)に写真美術館で発表するとのことでした。
このビルは、既にテナントが一軒しか入っておらず、近い将来は壊されてしまうとのこと。歯医者さんや床屋さんであったところは、その面影をそのまま残して、まさに残像そのものの中で展示がされています。
小川さんに連れられて、2階で行われている恵比寿でスペースデザインやショップをしているGIFTの「SOUND TRIP」に行きました。テーマは「光を聴く」。僅かな光の暗闇の中で聴覚が鋭敏になっていくのを感じます。聞こえてくるのは「鳥のさえずり」。外に出ると思いがけず五感が刺激されたことでリフレッシュした感じが、その気分をまといながら底冷えの馬喰町界隈を散歩して帰途につきました。
以前、アノニマスタジオやルーサイトギャラリーには行きましたが。他にもこの界隈のギャラリーには興味があるので、今度は昼間の散歩を楽しみたいと思います。

まず、お昼ご飯から。コロッケが大好きなので以前から行きたいと思いつつ、行けなかった、というか、たどり着いた時には売り切れになって食べられなかったコロッケで有名な西麻布交差点のすぐ近くにある三河屋のミックス(コロッケ、メンチ、チキンカツ、ハムかつ)定食(950円)を少々並んでいただきました。やっと案内されて待っていると、ご主人が優しい声で「おいしいご飯をお待たせしました」と持ってきてくださいました。飲食店でそんな口上初めて聞きました。全体にとてもアットホームなサービスにこころひかれました。コロッケはジャガイモを粗くつぶしてありその食感を味わうことができました。ボリュームたっぷりで「ご飯のお代わりいかがですか?」とお声を掛けていただきましたが「残念ですが入りません」。


腹ごしらえをしっかりした後は、今日のメインの場所へ。以前から待ち遠しかった桃居さんでの「升たか陶漆展」(13日まで)。雑誌などでは拝見していたのですが実物を見たことがなかったのでとても楽しみでした。今の器の傾向は、無地、シンプルという中にあって、蓋モノ、急須、皿等に過剰とまで思わせるような丁寧に描き込まれた絵付け。でも、値段が思ったより安い!桃居のご主人の広瀬さんに思わず「こんなに手間を掛けていて値段間違っていないんですか?」とお聞きしてしまいました。「仕事に比べて安いと思います。でも、升たかさんが食器として皆さんにつかってほしいという願いがあって、そうするとそんなに高い値段では売れませんし」と、拝見するだけのつもりだったのですが、とても良心的なお値段に心動かされてしまい小皿を5枚いただきました。子供が子年なので一枚はねずみの描かれたものを入れました。
帰り際に思いがけず、升さんがいらして少しお話ししました。偶然、「阿佐ヶ谷ふゆものがたり」に蒔絵のアクセサリーを出してくださっている奈良井志野さんも升さんとお知り合いらしく昨日うかがってお話ししたそう。いろんなところでつながっていくなと縁を感じたのでした。

今日は、動き始めたのが早かったので時間にゆとりが少しあるので、本当に久しぶりに「さかむら」にうかがいました。お店にはいると人の気配がなく、大きな皮袋に活けられた白い椿と赤い実の付いているひよどりじょうごが私を迎えてくれました。ここの空間も詩情を感じさせるものがあってそれを独り占めして心が開放されていく感じがあります。しばらくして坂村さんが戻っていらっしゃいました。明日から北京に買い付けに行くらしく、私も去年久しぶりに行った北京の変わり様や骨董市の話、ここでも升たかさんの器がいかに丁寧に仕事がされていて値段が良心的なのかというような話を、しました。「野の花2」という彼が生けた花の写真集を一部頂きました。久しぶりにいただいた黒いカップに入った深煎りのニレブランドのおいしさを味わっていると、次の約束の時間を忘れて急いで外苑西通りまで走ったのでした。


12月5日〜24日まで、常設の作り手の器に加えて、革、蒔絵、陶、金属のアクセサリーや手染め・手織りのカシミアのマフラー、きびがら細工、トスカーナから空輸の搾りたてオリーブオイル、オリーブの木のまな板等の冬の贈り物にふさわしいものを展示しています。
「himie」下川宏道さんのジュエリー:トルコ石を使った繊細なネックレスやピアス、アジサイのロングピアス、オニキスのピアス、鳥かごのピアス、イスの形のネックレスやピアス。
下川さんの作品は、一見繊細でか弱い感じなのですが、身につけるとその存在感を発揮するのです。
現在、銀座松屋でも展示会をしています。

須藤華順さんの革のアクセサリー:普段は革や布などのバッグや小物を中心にナチュラルでシンプルで使いやすいものを作られています。魚や十字架のネックレスや丸や四角のブローチ等のアクセサリーにもそのポリシーが生かされています。中旬には、少し個性的な丸・三角・四角シリーズなどの作品も登場します。

奈良井志野さんの蒔絵のアクセサリー:学生時代に専攻していた日本画を生かした蒔絵とオリジナルシルバーチェーンは身につけるだけで上品な雰囲気を醸し出します。

奈良井志野さんの石のオブジェ:河原で見つけた気に入った石に蒔絵を施しています。
まるで、そこに蛙がはりついていているようで見ているだけで心安らぎます。


山藤響子さんの陶のアクセサリー:普段はオブジェを中心に作陶活動をしていますが、山藤さんのアクセサリーは楽焼きや銀彩などの土ものからつくられ、髪留めやブローチやペンダントもありますが、作り手に使い方を楽しんでもらおうと特に用途を決めないものも多数。

山城玲子さんのカシミアのマフラー:自ら、紡ぎ・染め・織りをしたカシミアのマフラーはその色使いもさることながら、身につけてその上質感を実感します。

青木さんのきびから細工:きびがらを使って日本の民芸のよさを実感する心微笑む作品を作り出しています。来年の干支の丑です。大小(親と子)あります。

オリーブの木のまな板:イタリア、トスカーナのマエストロが切り出すオリーブの木のまな板。厚さもしっかりあり一生ものとしてお使いいいだけます。形も木目も色々で唯一無二なもの、キッチンのインテリアとしても楽しめます。今回到着が間に合わずに予約販売とさせていただきます。お届けは1月末。大小各10枚の限定。

オリーブオイルは3ブランド7種です。
・トスカーナのカペッツァーナ エキストラヴァージンオリーブオイル100ml15 00円:搾りたてを空輸便でお届け。
カペッツァーナは、オーナーのポナコッシ伯爵一家が伝統的な製本に近代的な技術を 組み合わせ、一族が深く関わりながら大変質の高いオイル作りに情熱を傾けていま す。平松洋子著「おいしい日常」(新潮文庫)にもとりあげられています。
・チェレートリーブリ エキストラヴァージンオリーブオイル 250ml2350円 シュタイナー農法で耕された土地で作られた豊富なミネラルと芳しい香りの高品質な オイル。
・ディ・モルフェッタ5種(オリーブオイルの華100ml1200円 オレンジフレ ーバーmレモンフレーバー、ペペロンチーノフレーバー、バジルフレーバー4種10 0ml950円)エキストラヴァージンオリーブオイル
パスタ、パン、サラダ、お豆腐等々その用途に合わせてフレーバーをお楽しみくださ い。
