長野亮之介「ズットスキダ」展


亮之介、淳子夫妻とはもう30年ほど前に、一緒に中国語を習っていた縁で知り合い、毎週土曜日に中国語を勉強し夜中までネパールカレーを食べてお酒を飲んでいました。
当時お二人が住んでいたのは竹林の中にあった素敵な長屋。そこで味噌作りを教えてもらいました。その家は確かに古い家でしたが、台所が狭いながらも機能的で美しかった。登山になど縁のない私が黒姫山にも一緒に登り温泉好きな淳子さんと湯治を楽しみ、お二人が淳子さんのご実家に引っ越しての竹垣のワークショップでは美味しいご飯をふるまってくれたり、沖縄の浜比嘉島で偶然に会って浜で淳子さんたちがサンシンをひいて歌い、小学生だった息子の希望でそのまま浜でテントで寝てしまったりと、淳子さんととても仲がよかったというわけではないのに思い出は尽きません。それからはしばらくあまり会うことがなくなって、昨年3月、高円寺でバッタリ亮之介さんに会って、「淳子が癌になって、手術をしたんだ。ステージ4と言われて」。それから1年と少したった6月18日に淳子さんは天に昇っていきました。私と同じ年で9月1日が誕生日。「一緒に還暦迎えようね」と約束したけれどそれはかないませんでした。でも、淳子さんは「自分の生を生き切る」と生まれ育った小金井の木々に囲まれた素敵なおうちの畳の部屋で何匹もの猫と亮之介さんと最後まで過ごしました。クールな観察眼を持ちながらもニコニコ笑っていた淳子さんと過ごした時間は私の心に生き続けています。
今回、イラストレーターの亮之介さんが淳子さんにまつわる作品を展示します。ご覧いただき、浮世離れした、ちょっと少年のような心を持つ亮之介さんともぜひお話ししてみてください。全日在店予定です。天から淳子さんはハラハラしながら見守ってくれているのではないかと思います